ペストロジー学会富山大会に参加してきました

こんにちわ、インターネット委員会の芝生です。
11月14日15日に富山県で開催されたペストロジー学会に参加してきました。
「Pestology」は「pest」と「logy」の合成語で「ペスト(有害なもの)を研究する学問」を意味します。
私たち害虫駆除業者に必要な様々な害虫の生態や駆除方法を学ぶ事が出来ます。
今年のペストロジー学会は害虫駆除業者や研究者、殺虫剤メーカーなど約300人が参加し盛況な会となりました。

聴講した講義をご紹介させて頂きます。

都市エコシステムの持続的未来における、ペストマネジメントの重要性
講師:Brian Forschler先生(ジョージア大学)

■ペストコントロール産業の市場動向
アジアは消費市場の急成長が著しく、ペストコントロール産業も、急成長するという好影響を及ぼしている。
その為、世界的大手PCOである、Orkin社、Rentokill社なども、アジア市場におけるフランチャイズ拡大を強力に推進していますし、薬剤メーカーアジアはにとっても、アジアは注目されている地域です。

●世界のペストコントロール市場
2017年に1兆8,360億円であった世界のペストコントロール市場は、
2024年には2兆6,352億円まで成長する事が見込まれている。(Technavio 2018) 
※為替レート:1ドル=108円
最大市場は北米であり、9,364億円 51%のシェアを獲得している。
アジア市場は4,320億円、23.5%のシェアを獲得している。

●ペストコントロール産業の年平均成長率(CAGR)
世界のペストマネジメント市場:5.4% アジア市場:8.5%

●成長要因
私達ペストコントロール産業が成長する為の要因は、以下の事が挙げられる。
①都市部人口の増加
②人々の社会経済的地位と意識の向上
③衛生サービスおよび食品安全における法整備や制度の強化
④海外旅行者の増加
⑤気候変動および人的要因

■アジアのペストコントロール業界が直面する課題
●構造物設計の変化(ビルと緑地の融合)
美しいグリーンウォールや高層ビルの屋上庭園などは、
害虫の繁殖しやすい環境を提供している事になり、害虫の増加が懸念されている

●外来種の侵入・定着
国際貿易の増加により、世界中から外来種が侵入しやすい環境が整備されてしまった。
2017年日本国内で初発見されたヒアリは既に定着してしまった可能性がある。

●都市環境における水系の殺虫剤汚染と駆除非対象生物への影響
デング熱など感染症を媒介する蚊の幼虫ボウフラは、下水道や雨水桝など水のある場所で繁殖する。
駆除の為に殺虫剤を散布する事は重要だが、殺虫剤が水系を汚染し、非駆除対象生物にも
影響を与えてしまう事を忘れてはいけない。現に、カリフォルニア州の多くの都市では
建物の排水が直接川や海へ流れ込んでおり、多くの殺虫剤及び
有害な溶剤成分が水系や堆積物の中で検出されている。

●有害生物が殺虫剤抵抗性を獲得
日本では1966年に初めて殺虫剤の抵抗性が確認されたが、その後も抵抗性の報告は相次いでおり、対策を求められる。
IRAC(殺虫剤抵抗性機構)による殺虫剤のグループ分類を確認し、有効な薬剤の使用、
異なる作用機序を持つ殺虫剤のローテーションが推奨される。

■東京2020オリンピック開催中の害虫リスク及び対策
東京2020オリンピックでは、2週間の開催期間中に世界中から
数百万人の訪問者が見込まれており、オリンピック会場以外の場所も訪れる事となる。
しかし、日本の清潔な文化に対して理解が乏しい可能性が高く、ゴミ問題を始めとした
様々な害虫による被害増加が懸念される。

●ゴミ処理による問題
訪問者によるごみや残置物の対応を迫られる。これらが処理しきれなかった場合、
ゴミが、ネズミ、ゴキブリ、ハエ、鳥、やぶ蚊などの繁殖場所となり得る。
また、東京の夏の熱さは害虫の繁殖を促進させる。

●媒介感染症
日本への訪問者は、入国時の発熱有無でしか検閲されていない。
しかし、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱などは最長7日間まで潜伏期間がある為、
入国後まで症状が出ない可能性がある。感染症を媒介するヒトスジシマカは日本に生息しており、感染者から吸血すればウイルスの媒介が可能である。

●トコジラミ
日本の訪問者自身、荷物などに紛れ込んで侵入してくる。
そして訪問者がホテルにチェックインした時点で部屋に住み着き、
2~3日後には最初の産卵(約15~20個の卵)を行う事で、
侵入から定着、繁殖へと被害を拡大させてしまう。

■オリンピック開催前、開催中、開催後にやるべき対策
●オリンピック開催2か月前(2020年5月)
・発生源除去
 蚊、ネズミ、ハエ、ゴキブリ等の発生源となり得る物を除去する。

・集中駆除の実施(蚊)
 蚊による感染症媒介リスクを下げる為、1~2週間に1度集中駆除を実施する。
 BTi(微生物殺虫剤)もしくはIGR(昆虫成長阻害剤)が有効

・集中的なネズミ用ベイト剤設置

・ホテル客室へのトコジラミ及びゴキブリの生息調査実施

●オリンピック開催1か月前(2020年6月)
・東京は空き缶を捨てられる場所を見つけるのに苦労する場所であり、都市全体に
 ゴミ捨て場を多く設置する必要がある。

・充分なゴミ箱が無いと、ポイ捨てが発生し、ネズミ・害虫の発生源となる

・発生源除去、集中的なボウフラ駆除、ネズミ用ベイト剤設置も継続すべき

・ネズミ・害虫問題を報告するホットラインが必要。公益社団法人日本ペストコント
 ロール協会が率先して、この役割を担うべきであるし、出来るはずである。

●オリンピック開催中
・ネズミ、害虫問題を報告する公衆衛生ホットラインが存在すべき

・ボウフラ駆除を継続すべき。必要があれば煙霧で蚊及びハエの成虫を駆除する。

・公衆ゴミ箱などは最低1日2回以上回収する必要がある

■総論
PCO、PCO協会はホテル、飲食店、自治体、保健所、オリンピック運営組織の会場担当委員会などに対して、「有害生物の発生を予防する為に、全関係者が一丸となって取り組む必要がある」と伝える必要がある。
また、公益社団法人日本ペストコントロール協会はペストコントロールのエキスパートとして、リーダーシップを発揮し、現代社会における有害生物に関する多くの課題に立ち向かう事が可能な日本で唯一の団体。
成功の鍵は、殺虫剤は最終手段という前提で考え、効果的な防除方法を検討する事。
全ての関係者に対して情報共有とコミュニケーションを行う事である。

以上です。

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